農家がバイヤーと交渉する場合は、メモを取って○○しておくべし

新規就農したならば、
必ず考えなければいけないのが『販路』だと思います。
地元のJAに全量出荷!!という方には不要な事かもしれませんが、
『自分の商品は自分で届けたい』
『付加価値をつけて、それに見合った金額で販売したい』など、
農家とお客さん、農家とバイヤーが直接交渉するケースもあると思います。
そういった場合、出荷が上手く行っている時は問題ないです。
ですが、天候不順、農家の体調不良、不慮の事故、ケガ、
または親族のトラブル(病気、葬儀など)があり、
当初の出荷が出来ない場合、簡単にトラブルになります。
そういったケースをなるべく減らすためにどうすればいいのかを紹介します。

目次

大前提:契約に、農家の大小は関係ない

大きな企業、団体とのキッチリした契約書を交わした取引であっても、
地元の小さなレストランとの口約束であっても、契約は契約です。
この記事はトラブル回避のための方法を紹介しますが、
理想は契約通りの作物を栽培し、出荷する、という事なのをご理解下さい。

初回の商談の際に、『不作の場合』を必ず相談しておくべし!

新規の取引相手の場合、商談そのものに慣れていないと、
なかなかこちらからリードして話を進行することは難しいものだと思います。
特にバイヤーなどが相手の場合、
向こうは毎日やっている事を流れ作業のようにこなし、
農家はそれについていくだけで精一杯の事が多いでしょう。
商談を重ねていけば、
『農家目線で考えてくれているなぁ』
『ヤバい、この人とは取引しちゃダメだわ』とか、
見えてくるとは思います。

とはいえ!!取引相手にとって、
あなたが商談慣れしているのかどうかは、オマケの要素であり、
『初取引だからトラブルがあってもいいよ』という人はおりません!
天候不良であっても、自分や家族の体調不良であっても、
『出荷します!』と言ったのなら、
基本的には農家サイドの責任となります。

まずはこの点を理解してもらった上で、
『ところで、不作の場合はどうします?』の相談は必須です!!

夢見心地なままの商談はヤバい

JAや市場を通さず、農家がバイヤーと直に交渉している時は、
何となくお互い『特別な感じ』がするものです。
『自分は農協を通さずに商談が出来たぞ!』という高揚感。
バイヤー側も、初回取引だから多少警戒しているとしても、
『まぁ、わざわざ直接交渉してくるんだから、
 自信があるんだろう。出荷ミスとかトラブルとかはないだろう
(というか、そうあってくれないと困る)』
と思っています。

そんな中で農家から
『もし、予定している出荷ができない場合はどのように対応すべきですか?』
とはなかなか言い出しにくいと思います。
『え?こいつ実は自信無いの?ヤバいの?』と思われたら、
取引が無しになるかもしれない、、、と思ったり。
私が実際にあったケースだと、
『出荷が難しくなったら、その時に考えましょう。
農家さんは無理しなくていいですよ』
と、
丁寧に『後回し提案』をされたら、
『はい、お言葉に甘えます』と言いたくなると思います。

私の場合は、こんな悲惨なことになった・・

でも、それって結構リスクが大きいです。
例えば、個人事業主で1人で農業をしていて、
ほうれん草1袋200gにして、週間1000袋のほうれん草納品を、
4週にわたって合計4000の注文を受けたとします。
あなたの希望販売単価は140円だったとします。
しかし、雨が多く、天候不良で商談時よりもほうれん草が小さい。
このままでは予定数量の出荷が出来そうにない。さぁ、どうしましょ?

・小さいほうれん草を当初の予定より増量して予定通り200円で売る
・小さいほうれん草を予定通りの重量入れて売る。ただし単価は安くなる
・天候不良ながらも、何とか予定通りに育った大きいほうれん草のみを納品する。
 ただし数量は予定より少なくなる
・当初の約束通りの納品が出来ないので、全ての注文がキャンセルとなる。


予想されるのはササっと思いつくだけでこういったものがあります。
実際は、もう少し複雑な条件な場合もあるでしょう。

そして、こうなった場合、主導権は一般的にバイヤー側が握る場合が多いです。
『農家さんは無理しなくていいよ』
と言っていたバイヤーさんも、ご自分の仕事や立場があります。
『えっ!?トラブルの時はお互い様でしょ?
 こっちも大変なんだから、これくらいはそっちも頑張って下さいよ。
 これぐらいのことで無理とか言ってたらダメですよ』

となる場合もあります。
というか、私の場合はそうでした(相手の言い回しは勿論違いますが)

そうなった場合、
『もう少し待てばしっかりした大きさになるほうれん草』を、
泣く泣く早採りせざるを得ない。
しかもサイズが小さいので袋詰めも捗らない
普通なら1時間で終わる収穫ー袋詰めに、2時間もかかる
となると、当初予定していた1週間で1000の納品予定が700しか出来ない
それでも1000出してくれ!と言われている。
アルバイトを雇おう。時給がかかる、、、、
アレ?利益はいくら、、、、?

上記は、悪い方悪い方に考えた
シミュレーションのように思われるかもしれませんが、
ほぼ私の実体験です。

結局、対策しなかった自分の責任

こんな扱いをしてくるバイヤーが悪い!!
と思う、心優しい方もいるかもしれませんが、私は違うと思います。
ちゃんと商談時にトラブル時の対応を話合わなかった私が悪いんです。
『その時に考えましょう』と言われた時に、
『規模の小さい農家なので、トラブル時の対応を決めておかないと、
 経営に重大な影響が出る場合があります。
 その時ではなく、今それを決めておきましょう。
 決められないなら、勝手ながら辞退させて下さい
』というべきだったのです。

商談、不安だなぁ・・と思った方はコレ見て!

商談の時に、そんな大げさな事を言えるワケないでしょ、、、という方は、
今から書く方法を試してみて乗り切ってみて下さい。
最低限、コレが出来ないのなら、バイヤーとの交渉はやめておいた方がいいと思います。
多分、ひとつのトラブルで大損することになると思います。
こう考えると、
トラブルがあった時に盾になってくれる
JAという存在は、

気付きにくいですが農家にとって大きな存在なのです、、、、。

あらかじめ、商談の要点リストを作っておく

商談・・・・
えーと、何を話すんだったっけ?
忘れたわ。まぁいいや、、、からの
『こんなハズじゃなかった、、、』を防ぐために、

あらかじめ商談のポイントを
まとめておいて印刷するか、
スマホの入力画面に入力しておきましょう。

商談で決まった事で、ひとつひとつ余白を埋めていく感じです。
・作物
・納品時期
・荷姿
・重量
・数量

・肥料、農薬使用回数など、栽培条件について
・納品はカゴ?箱?

・販売価格(税抜?税込?)
・代金の受け取り方法、受け取り時期、手続きについて
・納品場所
・納品にあたりこちらが負担する金額はあるか?
 (出荷手数料、指定の袋、箱、運賃、銀行振込手数料)
・出荷が難しい場合キャンセルは可能か?キャンセルの期限は何日前か?
・ペナルティはあるか?
・不作の場合、金額を下げるのか、数量を減らすのか、全てキャンセルになるのか?

などなどです。

『無理しなくていいですよ』の無理の基準はどこでしょうか?

バイヤーも人間です。
自分の仕事、自分の生活を犠牲にしてまで
農家を守ってくれる人はまず居ません。
「無理しなくていいですよ」と言われた場合も
「無理」をなるべく具体的なものにすると
例えばどういった数量・金額・スケジュールになるのか
その点はしっかり確認する必要があります。


商談中、お話の端々から
『農家目線に立ってくれる人だな』
『自分のことばっかりだな』など、
あなたとの相性もあると思います。
中には、商談時にはいい印象がなかったけど、
トラブル時には親身になってくれたーーー

という事もあるでしょうし、逆もあり得ます。


自分の畑のことをしっかり見るように、
相手のこともしっかり見ておくようにしましょう。
「相手の事を知りたい」という目で観察していると、
相手も本気になってくれますし、お互いいい商談になると思います。
ダメならダメで、早目に交渉を終わらせた方がお互いのためだと思います。

契約書は交わすべきか?

今までに飲食店やバイヤーとちょこちょこ商談してきましたが、
大手企業が親会社にいるレストランなどだと、
初回から細かい事まで記載された契約書の記入が必須でした。

本来それが理想だとは思いますが、
『は?契約書?零細農家が何言ってんの?俺の事信じられないの?』
というスタンスのバイヤーもいると思いますし、
これを読んでおられるあなたも
『いやー、、、契約書まではめんどくさいわ、、、』

と思っておられる事だと思います。
そういった場合にすすめたいのが、『メール』です。

商談内容をお礼とともにメールしておく!

先程紹介したリスト内容や、
商談の時に重要と思われる内容をメールにコピーして、
先方さんのメールアドレスに送ります。

ポイントなのは
『商談内容に勘違いがあったらいけませんので、
 確認のために送ります。

何か不備などがあったらご連絡お願いします』
という文言を、お礼とともに送ることです。

だいたいのバイヤーも嫌な気にはなりません。
そして、こうしておく事でトラブルになった時の対応時に、
『言った!言ってない!』でモメる事を防ぐとともに、
自分の希望する代替案を対等な立場で主張することができます。

オマケ:自分にあった注文キャパを把握する

余談になりますが、一応ご案内。
自分の経営規模や、スタッフの人数など
農家さんや農業スタイルによって、「受け入れ可能な数量」が当然異なるわけですが、
「天気もよく、スタッフも全員出勤して、
 トラブルもなく、理想的な状況だった場合、
 自分の農場の限界出荷数量はいくらなのか?」
を考えた上で、余裕を持って契約の数量や日程を決めましょう。

色々な販路を持つ私の先輩農家さんは、
「市場出荷に普段100の出荷をしているとすれば、
 スーパーなどに契約で出すの上限はせいぜい20~30くらいにしている。
 デパートなどの品質に厳しい所はせいぜい10くらいが上限かな」
とおっしゃっていました。
普段から100ケース出すチカラはあるのだけど、
天候不良、体調不良など、トラブルがあっても
問題なく出荷できるように、あらかじめ余裕を持って契約する。
そうすれば農家もバイヤーも困らない。
市場出荷は、利益が若干少なくなるけれど、
トラブルになるリスクがデパートやスーパーなどのバイヤーよりも低い。
だから自分は市場出荷をメインにして、無理のない範囲で
利益の高い他の販路を作っている。
という事でした。
リスク管理、という意味ではお手本のような取り組みだと思います。

あなたも上限の出荷数量のうち、
何パーセントくらいを契約として取り組むのか
考えてみてください。

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この記事を書いた人

農業歴12年のごぼう農家。
毎日Voicy(音声配信)で情報発信中。

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